東北旅行  御宿かわせみに憩う

最終更新: 2019年5月23日


 10連休を避けて4月下旬、福島に出かけました。久方振りの東北新幹線に乗車するとこの高揚感は一体何なのでしょう。宇都宮を過ぎると田園風景が広がり、那須塩原では雪を冠した那須岳の山容が望めました。郡山に近づくと待望の安達太良山、その奥にはこれ又、雪を頂く神々しいまでの吾妻連峰が姿を現しました。二本松を通過する時、私は高村光太郎の名著「智恵子抄」を思わずにはいられませんでした。古より万葉集の相聞歌をはじめ、幾多の愛の歌恋の歌はあるでしょうが、智恵子との出逢い、精神を病み半ば人間を失った彼女への献身愛、死してなお智恵子への思慕を綴ったこの不朽の作は、多感であった頃の私の心を捉えて離しませんでした。智恵子は東京には本当の空が無いと云い、安達太良の青い空が本当の空だと云ったのです。幸にも今回好天に恵まれ、紺碧の空の下、吾妻連峰を背景に今なお躍動する安達太良の偉容はまさしく一幅の絵のようでした。ほどなく福島に着きました。ローカル線に乗り換え、20分程で飯坂温泉駅に着きました。立ち並ぶ温泉郷とは駅をはさみ対極の道を車で走ること10分余り、新緑の木立に垣間見えた建物が目的の宿でした。豪華、奢侈などの造りでもなくむしろゆかしく幽玄のたたずまいでした。能舞台にも似た趣の大広間で薄茶(おうす)をいただき、庭付きの部屋に通され私達はそこで旅装を解きました。そしてわずか数時間前まで大都会の喧噪の中に居て、今この静謐の中に身を置く自分が何やら異次元の世界に迷い込んだ如く何とも不思議な空間でした。お目当ての夕食も和懐石とはいえ、洋の料理も取り入れられ、丹精込めて盛り付けられた料理と共に見事な器にも魅了されながら「日本料理は目で食べる」との言葉を思い出しました。ゆったりと名湯に浸かりながら、今までの来し方を懐想しつつ、連休明けより始まる半年を切った年長さんの勉強、新しく迎える新年中さんの事などを思い乍らどこにも真似の出来ない最高の勉強をと心に誓いました。

「長い間、自由が丘教室ご苦労様でした。そして誕生日おめでとう」との娘からの労いの旅でしたが、英気を養い、明日への糧とした意義ある東北旅行でした。



  車窓から撮った吾妻連峰      時折跳ねる鯉の音しか聞こえない静寂の中庭

  安達太良山 二本松市街